基隆市(台湾北部)の八斗子漁港碧砂泊区に安置され、観光のランドマークにもなっている「海功号」は、台湾で初めて南極探検やオキアミ捕獲を行った南極観測船だ。建造から50年近くが経ち。船体構造の多くに深刻な腐食が見られ、破損が著しいことから、周囲への安全を考慮した結果、今月20日より解体作業が行われていた。しかしその後、保存を望む歴史研究家などの陳情を受け、解体工事が一時停止している。文化部(日本の文科省に類似)、漁業署(日本の水産庁に相当)などが明日(24日)、職員を現場に派遣して実地調査を行う。
漁業署によると、「海功号」は1975年7月に進水し、漁場の観測や海洋生態資源の研究に従事した。また、台湾初の南極観測船として、南極探検やオキアミ捕獲などを行った。18年間活躍した後、1993年1月に退役。1998年からは八斗子漁港碧砂泊区に安置され、地元のランドマークとなっていた。
漁業署によると、「海功号」の船体は金属構造で、定期的にメンテナンスを行ってはいたものの、長期間海岸に安置していたことから、海洋環境や風化の影響を受けて腐食が深刻化していた。2019年に関連組織が集まって話し合った結果、解体処分することで一致。一方で、その輝かしい記録を記念するため、解体処分後もプロペラ1つと主錨2つを保存し、現地を公園化して展示することを計画していた。
基隆区漁会(=漁協)の陳文欽総幹事によると、今年7月6日、「海功号」のレーダー塔が強風にあおられて落下するという事故があった。幸い負傷者は出なかったものの、こうした事故を未然に防ぐため、漁業署、基隆市、国立海洋科技博物館などが会議を開いて話し合い、公共安全に与える危険を考慮した上で、今月20日から解体作業を行うことを決定した。現在、船体の5分の1ほどが解体されている。